文系大学生のための統計学の勉強方法

こんにちは、さんけつです。

 

すっかり「統計学ブーム」と言われることも久しくなりましたね!

GoogleのChief Economistが “The sexy job in the next 10 years will be statisticians.” と述べたように、これまで様々な分野で統計学が注目を浴びてきましたし、これからも統計学を駆使して世の中に技術革新や新しい知見をもたらしてくれることでしょう。

 

 

 

はじめに

ある日、私が池袋にある某書店の確率・統計コーナーに行くと…そこは人でいっぱい!ではないものの、それなりに立ち寄る方が多かったことを覚えています。理工系の方だけでなく、文系で活用を試みる方の影もちらほら。年齢層も私と同じ大学生から勤務帰りのサラリーマンの方、そしてご年配の方も立ち止まっては書籍に目を通している光景が広がっていたことには驚きました。実はそのほとんどが男性ばかりなのですが…。統計学の分野にも女性が参画する余地は十二分にあるのではないでしょうか。

 

それはさておき、統計学といわれて苦手意識を持たれる方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。特に私たちの世代などはそうかも知れません。私たちは「ヒストグラム」、「四分位偏差」相関係数」などといった統計学の基本的なことを小学校からやってきました。しかし、表からそれらの値を導出せよといったことしかやっておらず、いきなり分散や相関係数で登場する式が黒板に登場しては、その計算の手法を身体になじませるために順繰り順繰りノートに問題演習をしたけれど、結局どこで使うのか分からないまま学習を終えてしまった…。皆さんはそのような過去をお持ちではないでしょうか。

 

私自身もまた、そのような状態で大学に進学してきた人間の1人です。

 

 現在は大学で経済学を専攻しているのですが、1回生のとき、必修科目として統計学を履修していました。「経済と統計に何が関係あるんだ?」—その答えの1つとしては、「経済予測や政策評価として、統計学的な手法を用いる」ということがあるでしょう。学部では「計量経済学」と呼ばれることが多いのですが、そのなかで回帰分析やパネルデータ分析、時系列分析の手法を学習します。これらの理論は統計学と密接にかかわっていて、統計学がわからない人たちにとっては苦行であるとか…。統計学的な考え方は金融工学や証券分析にも広く応用が利くだけに、統計学と経済学は切っても切り離せない関係なのです。

勉強法を紹介する前に、私が1回生時に統計学分からない沼にはまった経緯を軽くご紹介します。相関係数や確率などといった高校でやった内容を理解しているからいいやーと "思い込んで" すっ飛ばしていたら、確率変数や正規分布辺りから意味が分からなくなり、意識がなくなりはじめ、気づいたときには「推定?検定?ナニソレ?」状態になっていました。主観ですが文系にしては数学はできる方であったのにも関わらず、統計学的な考え方が全く備わっておらず、統計学の単位はボロボロだったことを覚えています。
さすがにこれはまずいなと思い2回生になってから奮闘した結果、高校時代には全く分からなかった事柄の統計学的な意味が分かるようになり、勉強してから3か月と経たず、統計検定2級の問題もスラスラこなせるようになったのです!

勉強の成果として、統計検定2級を取得することができました。統計検定自体の認知度はまだまだ低く、また2級はその中でも大学教養課程程度の内容ですが、これからの統計学の学習の基礎として欠かせないものばかりなので受験してよかったと感じています。よって基本的には大学教養課程程度の統計学を修めること、統計検定2級に合格することを前提に話を進めます。

ここからは統計学に苦手意識を持っていた私が、どのようにして統計学の考え方を学ぶことができたのかを記していきます。

 

 

紙とペンを用意しよう

 

あ、いや、ごめんなさい。馬鹿にしているわけではないんです。
コンピュータが普及した結果、近頃ではExcelやRといったソフトで統計分析をすることが増えてきました。ExcelやRで学ぶ統計学の書籍も増えていますし、自分で計算することなしにデータ分析ができるようになり、グラフィックスも充実してより「直感的に、視覚で訴える」統計学の流れが確立されてきました。そういう意味では、学習環境が充実してきたと言えます。

 

しかし統計学の考え方を自分のものにするためには、自分で手を動かす必要があります。

 

直感的な理解も大事ですが、統計学が数学という言語でできている以上、直感で終わらせてはいけないのです。問題演習によってどういうことを求めればいいのか、統計学に関する知識の乏しい頭を絞っては思案し、手計算を実行しては解答までのプロセスと自分の答案を見比べて相違を吟味していくことで私は自身の成長を感じることができました。電卓も使用しないで紙とペンだけで問題を解いてみることをおすすめします。

 

はじめからコンピュータで勉強しても大事な統計理論が抜け落ちて、結局直感でしか分からない止まりになってしまうのは経験則としてお伝えします。

 

★今後Excelを用いた統計学を記事にしようと考えています。乞うご期待ください。

 

POINT☞基本スタイルは「紙とペンで問題演習」!

 

とはいっても教科書ないと心もとないというか、もちろん学習には教科書は欠かせません。自分がこれからどういったことをやればいいのかといったことを確認することも重要です。以下ではあなたの統計学の学習に参考になりうる教科書を紹介します。

 

おすすめの教科書

 統計学入門(基礎統計学Ⅰ) 

編:東京大学教養学部統計学教室 東京大学出版会(1991)

 

統計学入門 (基礎統計学?)

統計学入門 (基礎統計学?)

 

 通称「赤本」、東大基礎統計学3部作の1冊目。"統計学 教科書"でググればまず最初に出てくる、いわずと知れた名著です。ほかの方のレビューも参考にしていただけたらとは思いますが、次のことには気を付けて購入するようにしてください。入門と書いてありますが、初めからすべてを理解して読破できるほどの易しさではありません。慣れないうちは問題演習でわからない箇所、つまずいた箇所を赤本で調べるというように、辞書のような使い方をするのが吉です。多少は難解で、ところどころにもう少し説明があると分かりやすいなあというところはありますが、全体がきっちり網羅されており、後に紹介する演習書との相乗効果が発揮されて非常に助けられた一冊です。繰り返し読めば読むほど理解が深まるスルメ本。

 

この本は練習問題を解くというよりも、まず書かれている内容が大変に素晴らしいです。統計学を志すなら間違いなく持っておいて損はないでしょう。

基本統計学 第4版

著:宮川公男 有斐閣(2015)

 

基本統計学 第4版

基本統計学 第4版

 

赤本よりも説明がわかりやすい本を、という方にはこちらがおすすめ。大学の教科書にもなっている本で、赤本よりも通読しやすい印象です。高校数学との橋渡し的役割で、赤本には載っていないような数学的な証明もあります。私はベイズの定理を学習する際にこの教科書の説明を熟読していました。ベイズ統計学に興味のある方はご一読してみてはいかがでしょうか。例題が豊富なところも嬉しいですが…誤植があるような?

 

著者の宮川先生は最近『統計学の日本史』という本も書かれています。我が国に統計学の考え方が入ってくる、まさに黎明期に起こったできごとから、2度の大戦を経て現代ににおける統計学の在り方を、経済・政治情勢と絡めて興味深くまとめられています。統計理論はでてこないが、ふとした羽根休めに読みたい本です。

統計学の日本史 治国経世への願い

著:宮川公男 東京大学出版会(2017)

 

統計学の日本史: 治国経世への願い

統計学の日本史: 治国経世への願い

 

 

以下は教科書として使用するには難しいと考えるゆえ、ご紹介程度に控えます。

統計学基礎 改訂版

編:日本統計学会 東京図書(2015)

 

改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定2級対応 統計学基礎

改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定2級対応 統計学基礎

 

公式とは思えないような酷さ。統計検定2級も考えているようでしたら、日本統計学会から出版されているこちらも買っておいた方がベターです。買わざるを得ないといった方がよいでしょう。1つだけ言えることは、これだけで勉強しようと考えると赤本よりも訳が分からない状態になりますので、試験の範囲としてこういうものが出るのかという把握程度に入手しておくのが最良ではないでしょうか。

教科書の紹介は以上です。最初の2冊で悩んでいる方は直接店頭に取って読み比べてみてください。ここからはレベルアップに欠かせぬ演習書をご紹介します。

 

おすすめの演習書

統計学演習

著:村上正康,安田正実 培風館(1989)

 

統計学演習

統計学演習

 

 私は演習書としてこれを選択しました。例題が豊富かつ問題もやりがいがあるものばかりです。基本事項としておおまかにまとめられており、場合によっては簡便な計算法や線形補間などが紹介されているので、統計学の問題を書いて解くのにはうってつけの本。実は問題だけならインターネットからダウンロードできるのはここだけの話なのですが、そこに掲載されている版が古いのか、誤植がひどいので新しい版を購入することをおすすめします。

記述であるということ以外は統計検定2級に出るような問題にそっくりなので、検定受験者は公式問題集と一緒に見ておくとベターです。

★簡便計算や補間の話は数理統計の本に載っていたと記憶しているので、時間ができたら教科書の方に数理統計の教科書も追記しておきます。

 スバラシク実力がつくと評判の演習統計学キャンパス・ゼミ

著:高杉豊,馬場敬之 マセマ(2017)

 

スバラシク実力がつくと評判の演習統計学キャンパス・ゼミ

スバラシク実力がつくと評判の演習統計学キャンパス・ゼミ

 

大学生の助っ人、 キャンパス・シリーズ。かの成績優秀な彼も使っていました。私は軽く解き方を確認する程度でしか使っていないので大学の図書館で借りました。

 

以下は難易度が格段に上がると考えるゆえ、ご紹介程度に控えます。

*確率統計演習1 確率 / 確率統計演習2 統計

 著:国沢清典 培風館(1966)

 

確率統計演習 1 確率

確率統計演習 1 確率

 
確率統計演習 (2)

確率統計演習 (2)

 

別名「国沢確率」、「国沢統計」。 発展的な演習書なので、ちょっとやそっとで購入すると冗談抜きに非常に痛い目にあいます。痛い目にあった人がここにいます!

アクチュアリーを目指している人たちがよく持っているような本です。統計重視だと2がメインになるでしょう。2の教科書としては東京大学出版会基礎統計学3部作の自然科学の統計学、別名「青本」が挙げられますが、青本を読むのにも勇気が必要になってきます。少なくとも線形代数といったものが登場してきて高校数学では太刀打ちが難しくなってきますので…。

 

勉強の進め方

私は①東大出版の赤本と②培風館の統計学演習を組み合わせて使いました。

まず②の基本事項を確認して、例題を一通り解いてみます。わからない箇所はもう一度基本事項を確認します。それが終わったら問題を解いて答え合わせをし、正誤にかかわらず①で該当する箇所をチェックしました。①だけを読んでいると分からないことでも、②で演習しながらだと「ああ、こういうことなのか」と、少しずつ分かってきます。

ちなみに演習で間違えた問題はきっちり赤で直して計算を確かめた後、何も見ずにすぐに解きなおすようにしましょう。こうやっても意外とすぐには定着しないもので、場合によっては全く解けないこともあります。解きなおしを軽んじないことが大切です。

 

統計検定2級はマークシート方式であるものの、記述で解くことに慣れると楽です。公式問題集を解くことも必要ですが、ゴリゴリ紙とペンで解いて実力を確固たるものにしましょう。

 

最後に

統計学の基本的な理論が少しでも理解できるようになれば、世の中にある怪しいデータや因果・相関関係に敏感になれるはずです。情報が多く氾濫している現代社会においては、適切な情報が選択されなければいけません。人間が生きていくうえでの意思決定は情報に大きく依存していますが、情報にはデータ、統計が不可欠です。賢く、よりよく生きていくためのツールとして、私は統計学を学ぶ意義があるのだと考えています。

 

まだまだ研鑽の余地が多く、拙い大学生ではありますが、統計学の勉強に悩んでいるみなさんの助けになれればと考えています。最後まで読んでいただきありがとうございました。